片原饅頭 前橋本店
群馬県前橋市 店舗ジャンル:和洋菓子店・パン屋前橋銘菓「片原饅頭」を製造・販売する菓子店。2度の閉業を経ながらも、初代の味を継承。「酒種」で仕込む生地と上品な甘さの餡、経木の香りが多くの人を惹きつけている。
2度の閉業を乗り越えて復活
前橋市城東町の一角に、モダンな店構えが目を引く店がある。前橋銘菓「片原饅頭」を製造・販売する、「片原饅頭 前橋本店」だ。ルーツは1832(天保3)年、旧片原通りに店を構えた「志満屋本店」に遡る。百貨店帰りの手土産として人気を博したが、製造工程の手間から事業承継が難しく、1996(平成8)年に幕を下ろした。2度目の幕開けは2010(平成22)年。熱狂的なファンであった前橋出身の元競輪選手が、かつての職人頭の助けを借りて復活させたが、後継者不在により2020(令和2)年に再び閉業する。そこに光を当てたのが、地域活性化を目指して県内の就職支援を手掛ける会社。後継者不足などの地域課題に向き合う中で、行き着いたのが片原饅頭だった。約1年8ヶ月の伝承・研究開発期間を経て、2023(令和5)年10月に開業。3度目となるスタートを果たした。
酒種とこだわりが生んだ「片原饅頭」
片原饅頭は、「酒種」で生地を発酵させる饅頭だ。県内の酒蔵から譲り受けた糀に、県産のうるち米ともち米を合わせて仕込む酒種は、鍋の中でぷくぷくと息をする。これを県産の小麦粉と混ぜ、発酵させて生地にする。気温や湿度だけでなく、その日の酒種の状態によって、各工程にかかる時間も変わるという。「まさに生き物です。人間が快適だと感じる気候の時にこそ、良い饅頭ができます」と、マネジャーの田島なつみさんは語る。餡には、北海道産小豆を使用。皮をむいたら、大鍋で炊き上げる。生地とのバランスを考えた、やさしい甘さだ。品のある薄めの色合いに仕上げるのもこだわり。職人の正確な手仕事で包み込めば、半分に割った時に、餡が均等に詰まった美しい断面が現れる。敷き紙は、長野県産の赤松を薄く削った経木。「この移り香がなければ、片原饅頭ではありません」と、田島さん。見た目から香りまで。全部揃って初めて、多くのファンに愛される一品が完成する。
真っ白な空間から、歴史を紡ぐ
真っ白な内外装が印象深い、片原饅頭 前橋本店。壁・天井・カウンターなど、すべて白一色だ。「一般的な饅頭よりも色白な片原饅頭をイメージして、この配色にしました」と、田島さんは教えてくれた。リーフレットや手提げ袋の差し色には、昔の意匠に着想を得た青色を採用。通称「片原ブルー」と呼んでいるという。一面ガラス張りの造りも特徴で、「建物の外からも、製造する様子を見渡せるようになっています。ごまかしがないことの証です」と語る。洗練された空間作りの背景には、「昔の店を知らない世代にも興味を持ってほしい」という想いがある。一方で、ロゴは饅頭を上と横から見た形を模し、輪郭にはあえて手描きのテクスチャを残す。饅頭に敷く経木や茶色いクラフトボックスなど、所々に温もりを感じる店内には、手仕事を大切にする姿勢がにじむ。伝統と新しさを両立しながら、これからも片原饅頭の歴史は紡がれていく。
生産者紹介
マネジャー田島なつみ
高崎市出身。県内のパティスリーで働いた後、就職支援を手掛ける「ワークエントリー」へ入社。同社が片原饅頭を事業承継する際、洋菓子作りの経験を見込まれ、製造の担い手に抜擢された。前任者から厳しい指導を受けながら、伝統の味を追求。製造責任者として認められた日には、涙が出たという。「饅頭は生き物ですから、まだまだ研究中です」と、田島さんは笑顔を見せる。やりがいは、お客様との会話。昔から片原饅頭を知る人が、その魅力から美味しい食べ方まで教えてくれる。「『死ぬ前に食べられて良かった』というおばあちゃんの言葉が、今も胸に残っています」と、目を細める。近年は催事にも積極的に出店し、直接声を聞く機会を増やしている。「3世代で語りながら食べられる饅頭は、なかなかないと思います。今後は前橋以外の地域にも、この味を広めていきたいです」と、田島さんは力を込めた。
店舗詳細
| 店舗名称 | 片原饅頭 前橋本店 |
|---|---|
| 住所 | 群馬県前橋市城東町2丁目3-8 |




















