渡良瀬川の清流と赤城山の山並みに抱かれた桐生市は、群馬県東部に位置し、市域の約7割を豊かな森林が占める自然豊かな街です。その歴史は古く、奈良時代初期には朝廷へ絹織物を献上した記録が残るなど、1300年以上にわたり日本の繊維産業を牽引してきた「織都(しょくと)」として知られています。徳川家康の命により整備された 「桐生新町」の街並みや独特のノコギリ屋根工場は今も残され、国の重要伝統的建造物群保存地区にも選定されています。市内にはJR両毛線、わたらせ渓谷鐵道、上毛電気鉄道、東武桐生線の4路線が乗り入れ、東武特急を利用すれば浅草から乗り換えなしでアクセスできるなど、都心からの優れた利便性も魅力です。平成の大合併を経て誕生したみどり市を挟む飛び地構造の市内では、山間部の黒保根(くろほね)地区で育つ原木しいたけや舞茸、赤城の裾野で栽培されるぶどうなど、高低差を生かした多種多様な特産品が生まれています。織物文化によって磨かれた職人気質やもてなしの心は、名物の「ひもかわうどん」や「ソースカツ丼」といった独自の食文化にも受け継がれ、今なお街の日常に深く息づいています。
桐生市ってどんなところ?
奈良時代から続く絹織物の歴史
桐生と絹の歴史は古く、奈良時代初期には朝廷へ絹織物を献上した記録が残ります。関ヶ原の戦いでは徳川方に「旗絹」を納め、江戸時代には桐生天満宮の門前で絹市が開かれ賑わいました。京都・西陣の技術を取り入れ発展した「桐生織」は、1977年に国の伝統的工芸品に指定され、お召織や緯錦織など7つの技法が今に伝わります。2015年には、女性たちが絹産業を支えた歴史を伝える日本遺産「かかあ天下—ぐんまの絹物語—」の構成文化財として、市内の6つの史跡が認定されました。街を歩けば、絹とともに歩んだ「織都」の面影が今も随所に息づいています。
職人のまちで独自に進化した「粉もの・ご当地グルメ」
昼夜を問わず織物工場が稼働していた桐生では、忙しい職人たちが手早く食べられる出前や賄い料理として、うどんやソースカツ丼が発展してきました。代表格の「ひもかわうどん」は、店によっては幅10センチを超える平打ち麺が特徴で、その独特の食感と存在感で訪れる人を魅了します。また、伝統の「桐生うどん」は江戸時代から続く郷土料理として文化庁の「100年フード」にも認定。冷めてもおいしいソースカツ丼も親しまれており、市内で「カツ丼」といえば卵とじではなくソース味を指すほど。織都の繁栄が育んだ独自の味が根付いています。
桐生市のおすすめスポット

桐生新町重要伝統的建造物群保存地区
桐生天満宮を起点に形成された、織物産業の中心地です。江戸時代後期から昭和初期に建てられた主屋や土蔵が軒を連ね、その合間にはノコギリ屋根の織物工場が今もたたずみます。北側の高窓から一日を通じて安定した光を取り入れるノコギリ屋根は、繊細な糸の色を見極める織物街ならではの工夫。歴史的な製織町としての価値が評価され、2012年に国の重要伝統的建造物群保存地区に選定されました。ノコギリ屋根を活用したパン屋やカフェ、ベーカリーなどのリノベーション店舗も多く、街歩きを楽しめる注目のエリアです。

桐生天満宮
桐生新町の宿頭(起点)として、1591年(天正19年)に現在地へ遷座した神社です。もとは磯部明神を起源とし、室町時代に京都・北野天満宮の御分霊を合祀しました。15年の歳月をかけて建立された重厚な社殿(本殿・幣殿・拝殿)と末社春日社本殿は、2023年に国の重要文化財に指定されています。境内で開かれる「古民具骨董市」は関東三大骨董市の一つとしても有名で、掘り出し物を求める多くの参拝客で賑わいます。

宝徳寺
室町時代に創建された臨済宗建長寺派の寺院で、かつては桐生城の裏手を守る要塞の役割も果たしました。名高い見どころは、本堂の黒い床板に境内の緑や紅葉が映り込む「床もみじ」です。磨き上げられた床が鏡のように庭園を映し出し、天地が逆転したかのような幻想的な景色が広がります。春の新緑や秋の紅葉など期間限定で特別公開され、静けさのなかで心静かに鑑賞する特別なひとときを堪能できます。

桐生が岡動物園
1953年に開園した、入園無料の動物園です。丘の上の園内には、哺乳類や鳥類をはじめ、爬虫類から魚類まで多彩な生きものたちが暮らしています。敷地内には遊園地が隣接しており、観覧車からは桐生の街並みを一望できます。開園から70年以上、世代を超えて地域の人々に利用されているスポットです。

桐生市有鄰館
本町通りに面して、江戸時代から大正時代にかけて建てられた11棟の蔵が連なっています。かつて酒や味噌、醤油の醸造・貯蔵に使われていた旧矢野蔵群で、現在は「桐生市有鄰館」として活用されています。厚い土壁に囲まれた空間は防音性に優れ、演劇やコンサート、展覧会などの会場として利用されています。歴史ある商家の蔵群が、形を変えて今も人々が集う場となっています。
桐生市の名物・特産品・お土産

桐生織
江戸時代半ばに京都・西陣から高機の技術が伝わり発展した絹織物です。お召織や緯錦織など7つの技法が、1977年に国の伝統的工芸品に指定されました。帯や着物のほか、ネクタイやストールなど日常に取り入れやすい製品も製造されています。

ひもかわ
桐生を代表する幅広のうどんです。麺の幅が非常に広いことが特徴で、店によっては10センチを超えます。薄く伸ばすことで、つるりとした喉ごしともちもちとした食感をあわせ持ちます。つゆにつけるほか、醤油ベースの汁で野菜とともに煮込む食べ方も親しまれています。乾麺や半生麺も流通しています。

桐生うどん
コシが強く、つやのある手打ちのうどんです。江戸時代から続く郷土料理として、文化庁の「100年フード」に認定されています。織物産業が盛んだった時代、職人が手早く食べられる食事として重宝された歴史をもち、現在は桐生麺類商組合を中心に伝統が継承されています。

桐生のソースカツ丼
揚げたてのカツをソースにくぐらせ、ご飯にのせた丼料理です。織物業の多忙な現場において、冷めてもおいしく食べられる出前料理として定着しました。桐生市内で「カツ丼」といえば主にこちらを指し、店ごとに使用する豚肉やソースの味わいが異なります。

しいたけ・まいたけ
桐生市が農産特産物に指定しているきのこ類です。1942年、桐生市の森喜作氏が純粋培養による原木しいたけの種駒(たねごま)製法を発明・特許取得したことで、全国的な人工栽培の道が開かれました。肉厚で香りの強いしいたけや、歯ごたえのあるまいたけが生産されています。

花ぱん
桐生天満宮の梅紋を模した焼き菓子です。江戸時代末期に和菓子店「小松屋」で誕生して以来、子どもの健やかな成長や学業成就を願って作られてきました。表面はサクッと、中はしっとりとした食感とほのかな甘みが特徴です。小松屋をはじめ市内の和菓子店等で製造・販売されており、群馬県の優良県産品推奨や全国菓子大博覧会での受賞歴をもちます。

桐生市産のぶどう
桐生市が農産特産物に指定している果物のひとつです。赤城山麓の水はけの良い土壌と昼夜の寒暖差を生かし、ハウス栽培と露地栽培で複数の品種が生産されています。毎年市内で「桐生市ぶどう展示会」が開催されるなど、品質向上に向けた取り組みが行われています。

焼きまんじゅう
蒸したまんじゅうを竹串に刺し、甘辛い味噌ダレを塗って炭火で焼き上げる郷土食です。織物産業で栄えた桐生では、作業の合間に手軽に食べられるファストフードとして職人や商人たちに重宝され、独自の粉もの文化とともに根づきました。創業明治28年の「前沢屋」をはじめとする地元の専門店や和菓子店ごとにタレの味付けや焼き加減にこだわりがあり、香ばしい味噌の香りとふんわりとした生地の食感が、今も市民の日常に親しまれています。
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