群馬県南西部に位置する人口約4万4千人の富岡市は、北西に奇岩連なる妙義山を仰ぎ、中央を鏑川が流れる街です。夏は夕立や雷が多く、冬は冷たく乾いた「からっ風」が吹く気候が特徴です。最大の象徴である世界文化遺産の「富岡製糸場」は、1872年(明治5年) に操業を開始した日本初の官営模範工場。木骨煉瓦造の繰糸所や東西の置繭所など当時の建物が国宝や重要文化財として今も大切に残されています。市内には上野国一宮の一之宮貫前神社や妙義神社といった歴史ある社寺も鎮座します。かつて養蚕で日本の近代化を支えた産業は、現在では機械製造や食品加工が基幹となり、丘陵地ではキウイフルーツや洋ランの栽培も盛んです。歴史と伝統を現代へ継ぐ「富岡シルク」は、上質な絹製品をはじめ、シルクを練り込んだ麺類や菓子まで幅広く活用されています。
富岡市ってどんなところ?
日本の近代化を語り継ぐ、絹の聖地
富岡製糸場は、1872年(明治5年)に操業を開始した官営の器械製糸工場です。建築は日本の伝統的な木造軸組に西洋の煉瓦壁を合わせた「木骨煉瓦造」。糸を繰る繰糸所は桁行140メートル、繭を保管した東置繭所・西置繭所はそれぞれ桁行104メートルにおよびます。この繰糸所と東西の置繭所を合わせた三棟が国宝に、ほか六棟が国の重要文化財に指定されており、操業当時の建物群が敷地ごとほぼ完全に残されている点が最大の特徴です。世界文化遺産の中心的な構成資産として、日本の近代化の歴史を今に伝えています。
丘陵地が育てる果樹と花
富岡市は県西部に位置し、緩やかな丘陵地と平地が広がる豊かな風土に恵まれています。果樹栽培では隣接する甘楽町とともに県内屈指のキウイフルーツ産地を形成しており、全国でもトップクラスの収穫量を支えています。また、花き栽培も盛んで、気品あふれる洋ランのほか、八重咲きの華やかな姿から贈答用として人気の高いエラチオールベゴニアなどが丹念に育てられています。さらに、群馬を代表する農産物であるこんにゃくいもの栽培も行われ、地域の農業を支えています。
富岡市のおすすめスポット

富岡製糸場
世界文化遺産の中心をなす官営製糸工場です。140メートル続く巨大な繰糸所には、かつて最新鋭の器械が並び、工女たちが糸を繰る熱気に包まれていました。柱のない広大な木骨構造やレンガ壁など、西洋技術と伝統工法が融合した建築美は圧巻。当時の空気感と日本の近代化を支えた歴史の息吹を肌で体感できます。

妙義山
白雲山、金洞山、金鶏山などの山々からなる総称で、鋸歯状の奇岩群が織りなす独特の景観で知られます。上毛かるたに「紅葉に映える妙義山」と詠まれる通り、秋には削り立つ岩肌と鮮やかな紅葉が見事な対比を描きます。麓には格式ある妙義神社が鎮座し、参道から見上げる荒々しい山容など、四季折々の絶景を楽しめます。

一之宮貫前神社
上野国一宮として古くから崇敬を集める古社です。鳥居をくぐった後に石段を下って参拝する、全国的にも珍しい「下り宮」の景観が大きな特徴。上毛かるたでも「ゆかりは古し貫前神社」と詠まれています。江戸幕府の手によって造営された権現造の豪華絢爛な社殿は、国の重要文化財に指定されており一見の価値があります。

群馬サファリパーク
自家用車や専用バスに乗ったまま園内を巡り、間近で生き生きとした動物たちを観察できるサファリパークです。草食動物から猛獣まで様々なゾーンが広がり、バスでの迫力ある餌やり体験も人気。園内には遊園地も併設されており、富岡製糸場などの市街地エリアからも近く、一日を通して楽しめるスポットです。

宮崎公園
ツツジの名所として親しまれる市街地東側の静かな公園です。園内には1520年(永正17年)の墨書銘を持ち、東日本最古級の民家として国の重要文化財に指定されている「旧茂木家住宅」が移築されています。製糸場周辺の賑わいから少し離れ、貴重な歴史建築と四季折々の自然を眺めながら落ち着いた時間を過ごせます。

旧富岡倉庫
かつて繭や生糸の保管拠点として活用されていた煉瓦造りや石造りの倉庫群です。現在は広場や交流スペースとして整備され、イベント開催や街歩きの立ち寄りスポットとして親しまれています。富岡製糸場から徒歩圏内にあり、絹産業で栄えた近代の面影が今も街並みに溶け込んでいることを実感できる場所です。
富岡市の名物・特産品・お土産

富岡シルク
製糸の街として栄えた歴史背景から、上質なシルク製品が特産品として親しまれています。シルク独特の美しい光沢となめらかな肌触りが特徴で、スカーフやネクタイ、タオルなど多彩な品が揃います。さらに、絹のタンパク質を精製して作られる「食べるシルク」もあり、食品やサプリメントとしても活用されています。

まゆこもり
蚕の繭(まゆ)の形をモチーフにした富岡市を代表する銘菓です。葛(くず)や粉あめなどを練り上げた白い生地で餡を包み、糸を引く前の可憐な繭の姿を表現しています。製糸の街ならではの情緒を感じさせる見た目と上品な甘さが特徴で、小ぶりで日持ちもするため、お土産や贈答用として高く評価されています。

キウイフルーツ
甘楽町と並び、県内屈指の栽培規模を誇る富岡市の名産品です。日照時間が長く水はけの良い丘陵地の気候を生かして育てられており、甘みと酸味のバランスが良い高品質な実が仕上がります。秋に収穫されたのち追熟を経て出荷され、11月から春先まで長期間楽しめるため、冬の贈り物としても重宝されています。

こんにゃく
こんにゃくいもの全国一の収穫量を誇る群馬県において、富岡市は西部地域の主要な栽培・加工エリアの一つです。生芋から作る伝統的な板こんにゃくや刺身こんにゃくをはじめ、味付け玉こんにゃくや絹パウダー入りの加工品まで幅広く生産されています。食物繊維が豊富でヘルシーな地元の味として、お土産にも親しまれています。

洋ラン
富岡市を代表する花き特産品の一つです。日照条件の良さを活かしてシンビジウムやコチョウランなどが丹念に育てられており、全国規模の品評会でも高く評価されています。花もちが良く、鉢植えのまま長期間美しさを保つのが特徴。真夏を除きほぼ一年を通して出荷されており、贈答用や祝い事の品として親しまれています。

おっきりこみ
幅広の生麺を旬の野菜とともに煮込む群馬県の郷土料理です。麺を下ゆでせずに煮込むため、汁に適度なとろみがつき、旨味がしっかり染み込むのが特徴。富岡市では、シルクの粉末を練り込んだ麺を用いた品も特産品として販売・提供されており、製糸の街ならではの味わいを楽しめる名物となっています。

ホルモン揚げ
富岡市で長年親しまれている名物軽食です。「ホルモン」という名に反して内臓肉は使わず、縦に切ったちくわ等の練り物を串に刺して揚げ、ウスターソースを絡めた一品。駄菓子屋や精肉店で買い食いする地元の味として広まりました。名前の由来には諸説ありますが、昭和の懐かしさを残す素朴な名物として愛されています。
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